運用成果の求め方~投資パフォーマンスを自分で評価できるようになろう~ その1
運用成果を求めよう
普通、投資を行う場合にはたった一つの投資商品に全額を賭けるというケースは少なく、色々な商品を様々な時点で購入したり売却したりするものです。
これらすべての投資活動の成果を合計したものが運用成果になります。
運用成果は利用しているサービス毎であれば、サービス側が勝手に出して表示してくれていることもありますが、複数のサービスを利用している場合は自分で算出しないとわからないことが普通です。
また、これまでのデータから期待されるリターンがわかっている場合は、これを用いて期待される運用成果を計算することができます。ですが、これは普通自分で計算しないと出て来ません。
こういったことは当然ながら将来の投資方針を決める上で必須なので、できることなら運用成果の計算を自分でできるようになっておくべきです。
そこで今回は、簡単な場合から始めて運用成果を計算できるようになりましょう。
簡単な場合~積立投資から考えてみよう~
最初に一定の額を投資して後は追加投資しないという最も簡単な場合にどうなるかという計算は
でやりました。
しかし、普通の人が投資をしようと思った場合、まとまった資金がいきなりあるケースは稀です。実際は、毎月貯金するのと同じように、毎月積立投資をするものでしょう。
そこで、積立投資の運用成果がどうなるかをまず考えてみましょう。
まあ積立投資の場合は、Webで検索かければ積立シミュレーションツールが色々あるので、それで見れば一発なので話は終わりと言えば終わりなのですが……(笑)
ここでは、背後にある考え方、計算方法についてもう少し踏み込んで解説しておきましょう。
この考え方を応用することで、より複雑な場合の投資であっても将来の運用成果がいくらになるかを計算することができます。
積立投資の運用成果の求め方
一番簡単な場合として、毎年一定額を積み立てる場合を考えてみましょう。
例えば、利率5%で毎年始に100万円を積み立てたとして、20年目の年末にいくらになっているのかを考えてみます。
いきなり20年後では難しいかもしれないので、まずは1年後を考えましょうか。
1年目ですが、年始に100万円を積み立てます。この100万円が1年後にいくらになっているかを考えると、 (万円)になっています。あえて計算はしないでこのままの形で書いておきます。
次に2年後を考えます。
2年目の年始に100万円が追加されます。
なので2年目の年始時点での総額は (万円)です。
これが2年目の年末には (万円)になります。
3年後を考えましょう。
3年目の年始に100万円が追加されます。
なので3年目の年始時点での総額は (万円)です。
これが3年目の年末には
(万円)です。
もう大体法則性が見えてきたかと思います。このまま20年まで式を伸ばせば答えを得ます。
すなわち、利率5%で毎年はじめに100万円を積み立てたとして、20年後の年末には
(万円)
になっています。よく見ると中カッコの中身は初項1.05、公比1.05の等比数列の和になっているので、
(万円)
となります。
単純に貯金した場合はトータルで2000万円ですから、 倍にもなっているわけですね。
積立投資の運用成果の求め方(別解)
上のやり方だと、一々時系列順に全体の計算をしないと答えの形が見えてこないので不便です。
そこで、このタイプの問題に対するもっと一般的な考え方はないかを考察してみます。
答えを出す寸前のこの式に注目してみましょう。
この式の個々のパーツは
となっています。
実はこれらはそれぞれ
:1年目の年始に投資した100万円の20年目の年末におけるリターン
:2年目の年始に投資した100万円の20年目の年末におけるリターン
:3年目の年始に投資した100万円の20年目の年末におけるリターン
:4年目の年始に投資した100万円の20年目の年末におけるリターン
:20年目の年始に投資した100万円の20年目の年末におけるリターン
になっています。
これはどういうことかというと、つまり、一々全体を順番に計算しなくても、各時点で投資した金額が終わり(20年目の年末)の時点でいくらになっているかを計算して、すべて足し合わせれば全体の運用成果が得られると言っているわけです。
一般の場合の運用成果の求め方
別解の考え方は応用性・一般性があります。というのも、別に一定額を毎年積み立てるといったケースに限らずこの考え方を使うことができるからです。
毎年投資できる額が一定であり、また利率も一定であるという仮定はだいぶ現実からは離れています。実際は毎年の投資額が増えたり減ったりするでしょうし、投資した時期によって利率も異なるでしょう。
そこで、次のようなもう少し複雑な例を考えてみましょう。
1年目の年始に100万円
2年目の年始に50万円
3年目の年始に120万円
4年目の年始に0円
5年目の年始に70万円
を積立投資しました。
ただし、投資のリターンは年率5%であったとします。
5年目の年末における運用成果はいくらになるでしょうか?
このくらいなら最初のように時系順に考えていってもできなくもないですが、個別の投資額のリターンを考えて足し合わるやり方でやってみましょう。
①1年目の年始に投資した100万円のリターンは (万円)となります。
②2年目の年始に投資した50万円のリターンは (万円)となります。
③3年目の年始に投資した120万円のリターンは (万円)となります。
④4年目の年始に投資した0万円は、何も投資しなかったわけですから、リターンも0万円です。
⑤5年目の年始に投資した70万円のリターンは (万円)となります。
したがって、運用成果は①~⑤をすべて足し合わせることによって得られ、
さらに、時期によって利率も変動する場合を考えてみます。
1年目の年始に100万円
2年目の年始に50万円
3年目の年始に120万円
4年目の年始に0円
5年目の年始に70万円
を積立投資しました。
ただし、投資のリターンは
1年目の年始~3年目の年末は年率3%、4年目の年始~5年目の年末は年率5%であったとします。
5年目の年末における運用成果はいくらになるでしょうか?
この場合、最初の考え方で順番にやろうとするとたぶんちょっと嫌になります(笑)
そこで、個別の投資額のリターンを考えて足し合わせましょう。
①1年目の年始に投資した100万円は、1年目の年始~3年目の年末は3%、4年目の年始~5年目の年末は5%で運用しました。なのでリターンは (万円)となります。
②2年目の年始に投資した50万円は、2年目の年始~3年目の年末は3%、4年目の年始~5年目の年末は5%で運用しました。なのでリターンは (万円)となります。
③3年目の年始に投資した120万円は、3年目の年始~3年目の年末は3%、4年目の年始~5年目の年末は5%で運用しました。なのでリターンは (万円)となります。
④4年目の年始に投資した0万円は、何も投資しなかったわけですから、5年目の年末も0万円です。
⑤5年目の年始に投資した70万円は、5年目の年始~5年目の年末は5%で運用しました。なのでリターンは (万円)となります。
したがって、運用成果は①~⑤をすべて足し合わせることによって得られ、
さらに複雑なケースを考えても同様です。
投資信託に積立投資する場合を考えます。投資信託は毎年リターンが変動し、マイナスとなるケースもあり得ます。
1年目の年始に100万円
2年目の年始に50万円
3年目の年始に120万円
4年目の年始に0円
5年目の年始に70万円
を投資信託に積立投資しました。
ただし、投資信託のリターンは
1年目は年率3%
2年目は年率4%
3年目は年率ー2%
4年目は年率0%
5年目は年率1%
だったとします。
5年目の年末における運用成果はいくらになるでしょうか?
①1年目の年始に投資した100万円のリターンは (万円)となります。
②2年目の年始に投資した50万円のリターンは (万円)となります。
③3年目の年始に投資した120万円のリターンは (万円)となります。
④4年目の年始に投資した0万円は、何も投資しなかったわけですから、5年目の年末も0万円です。
⑤5年目の年始に投資した70万円のリターンは (万円)となります。
したがって、運用成果は①~⑤をすべて足し合わせることによって得られ、
このように、どんなに複雑な場合であっても、個々の資産への投資額とそのリターンを計算して、それらをすべて足し合わせることで運用成果を求めることができます。
次回は、もう少し色々な場合について運用成果を考えてみましょう。