NEM

NEMを自分なりに調べてみた 第1回~「富の分配」の理想と現状の課題点~

NEMを自分なりに調べてみた 第1回~「富の分配」の理想と現状の課題点~

■NEMについてそれなりに踏み込んで調べてみました

私が現状のNEMをあまり気に入らないということは、以下の記事でも軽く触れました。

レスト版 仮想通貨格付け2018~素人が格付け会社に対抗してみた~

実のところ、私も最初はNEMを本当に良い通貨だと思っていました。仮想通貨投資を始めた11月の時点では、何も知らずにNEMを素晴らしいものだと信じてポートフォリオに加えていたのです。

NEMが理念として掲げる「富の分配」「新しい経済圏」というのは、言葉の上では大変素晴らしいものであり、この理念に共鳴してNEMを購入したという方も多いのではないでしょうか。

実際、NEMbarやNEMketなど、NEMを使った経済的な試みは既にいくつも現れてきています。この点について、好ましい盛り上がりを感じないわけではないです。こうした試みに関わっている人たちを悪く言うつもりはまったくありませんし、とても良い試みだと思っています。

あと、NEMちゃん可愛い

 

……しかしです。

 

このブログの妙な濃さが示しているように、私はまだ始めて2ヵ月強ながら、仮想通貨についてそれなりに熱心に勉強を続けてきました。PoW、PoS、PBFTを始めとしたコンセンサス(合意形成)アルゴリズムについても、もちろん勉強しています。

そうして学んでいけばいくほどに、NEMのちぐはぐさ、欠点が目に付いてきてしまったのです。

NEMは、お題目に掲げているほど素晴らしい通貨ではないのではないか……。

 

むしろ、どうも現状では言っていることとやっていることがかなり離れているのではないかと思えてきて仕方がありませんでした。

説明のため、以下「NEMの説明書」から引用しましょう。

POIとは何か?

NEMの公式ブログが原文であり、その日本語訳になっています。主張については赤字で示します。

この問題を避けるため、POSというシステムが導入されました。これはPeercoinという暗号通貨で最初に実装されました。従来のマイニングの代わりに、(電力ではなく)いくらPeercoinを持っているか、ということを指標に採用しました。

そうすることによって、より多く・より古くからコインを持っている人が、次のブロック生成の機会を与えられる(つまり報酬が得られる)ため、コンピューティングパワーに必要な電力が多く抑えることができます。

しかし、ここにも幾つか問題があります。お金持ちが次のブロックを生成しやすく、そこでさらにお金持ちがさらにお金持ちになります。お金持ちがさらに豊かになっていくという問題は先ほどのPOWと同じです。

ここでNEMが槍玉に挙げているPoS通貨の問題点は、主に次の点にあります。

  • PoSでは、保有額と保有期間の積に応じて比例的に儲かってしまうため、大量保有者ほどさらに儲かってしまう不公平な構造を持っている

  • 大量保有することに強いインセンティブがあるため、溜め込みを促し、流動性の低下に繋がる

  • 流動性の低下が進むと、長期的にはシステムが健全に機能しなくなる

これはPoS通貨の宿命とも言える構造的欠点であり、私が個人的に応援しているADAであっても例外ではありません。私の一番の懸念点の一つは、実はADAがPoS通貨であることによって、長期的にプラットフォームが機能不全に陥るのではないかということです。

NEMはこの問題点に対し、解決策を用意しているとしています。

PoI(proof of importance、重要度による証明)です。

 

再び同文章から引用しましょう。

 

そこでNEMの登場です。NEMの採用しているPOIは、持っているお金だけでなく、取引をした額や、取引をした人も考慮に入れて報酬を与えています。

つまりこれは、NEMネットワークを積極的に使う人が、利益を得られる仕組みになっています。この仕組みが優れているのは、富の分配の点です。NEMのネットワークに貢献した人は誰でも基軸通貨であるXEMを手に入れることができます。誰でも平等に機会を与えているのです。主な目的は、「世間一般の人」に力を与えることなのです。

PoSにおいては、お金持ちがさらにお金持ちになる。しかしPoIにおいては「富の分配」が実現するとしています。とても綺麗な言葉です。

ですが……。

 

少なくとも次の点において、現状のNEMは理想とは明らかに食い違うことをやっています。これは私がきちんとPoIの算式を調べて出した結論です。

  • 現状のPoIは、ただでさえ大量保有者にとって有利なPoSに「輪をかけて」大量保有者に有利なシステムである(そして、算式を改良したりハーベスティング参加要件を緩めてもPoSの本質的改良ではない。似たようなものでしかない)

  • 他通貨と比較しても高いサービス手数料(高いこと自体がまず問題。さらに、徴収された手数料の使い道は未定であるものの、ノード報酬やコミュニティファンドに回されるのではないかとされており、いずれにしても富は持たざる者から持つ者へと移る

よくよく読めばすべて公式サイトやホワイトペーパーに書いてあることから導ける事実であり、ことさらに問題にする必要はないという方もいるでしょう。

世の中が不平等であることは常識である。NEMが不平等だからと言って、何の問題があろうかと。

 

世の名は不平等です。それは疑いのない事実です。そして私も平等であることが何にも優先するとはまったく思いません。資本主義こそまさに、人間の経済的合理性が生んだ不平等な仕組みであり、有史以来続いてきたものです。そして不平等を生む代わりに、多くの恩恵も生んできました。資本主義に生きてその恩恵を受ける私が、不平等そのものを毛嫌いして批判するのはまったくのお門違いでしょう。

しかし、だからNEMも何ら問題がないという主張は、やや強引です。

それは、NEMがPoS通貨に劣らず不公平な通貨であるという事実を知っている人が十分に多いという前提によってのみ成り立つ主張です。

 

NEMの問題点は、上の引用で挙げたように、一見すごく綺麗事を言っているために、また綺麗事を実現できる仕組みであるかのようにPoIを宣伝してしまっているために、実際は別にそんなことはないし、できないという事実について人々の目を向けにくくしていることにあります。

 

私が批判したいのは、ここです。

 

実際は不平等そのものであるにも関わらず、さもそうでないように見せかけて、善意の無知者の目を欺きかねない言葉を使って誘惑していることについてです。

 

もちろんもっともな言い訳はあるでしょう。最初にPoIの式を設定したときよりも遥かに価格が上昇して、色々な条件やパラメータがどうしても対応できていないとか、だから仕方ないとか、そういった主張はまあいくらか本当のことだと思うし、わかります。

ただ悪いですが、そういった反論もやや論点がずれています。

価格がいかに安かろうと高かろうと、ハーベスティング参加要件がどうだろうと、算式のパラメータがどうだろうとPoIはシステムとして本質的にPoSとほとんど何ら変わらない代物です。
これは当初の設定時からの変わらない事実であり、他ならぬ設定者が一番よくわかっていたはずです。

 

であるのに、上の宣伝の仕方は一体どういうことでしょう? 我々こそがPoSの問題点を解決しているのだと受け取られかねない主張は。これは明らかな欺瞞です。

 

したがって私は、NEMのやり方はやや詐欺的であると思います。他がいかに仕方なかったとしても、この点についてだけは明確に批判されるべきでしょう。

 

NEMのPoIがPoSとそんなに変わらないという事実は、PoIの難しい算式についてきちんと調べないと見えて来るものではありません。

そして結構な人が、精々が「現在のハーベスティング参加要件である10000XEMを緩和すればそれだけでかなり不平等は解消する」と思ってしまっています。10000XEMからの緩和自体は、NEM運営は元々予定として考慮に入れていることでもあります。

おそらく少なくない人たちが、「現状はともかく、ポテンシャルとしてはPoIはPoSよりも素晴らしいもの」だと、公式の言う通りに信じ込まされてしまっています。本質的には、大した違いはないのに……。

 

ハーベスティング要件を緩和すれば、パラメータを弄れば、確かにいくらか不平等は改善されます。しかし結局のところ、いくら条件を緩めてみたところで、PoIはPoSの本質的な改善にはまったくなりません。流動性についても一定の効果はあるものの、限定的と言わざるを得ません。

どう足掻いてもPoIはPoSの亜種でしかない。むしろ「現状では」やや改悪ですらある。

そしてどう足掻いても「富の分配」というより「富の集中」なのです。

PoIは、NEMはPoS通貨の欠点はほとんど何も解決していない。NEMはこの事実を幾分誤魔化して売り出しています。

これがNEMの真実です。

 

色々調べた結果、NEMだけが特別に悪いとは言いませんが、公式に掲げられているほど素晴らしいものではありません。

サービス手数料も高いです。他にもっと良さそうな通貨は色々あります。

お題目を心から信じていた方には、もしかしたらショックだったかもしれません。あるいはそんなことは最初から知っていたという方もそれなりにいらっしゃるのかもしれませんが。

ただ私は、この事実を知らずに、NEMの掲げるPoIがPoSよりも公平な仕組みだと思って投資している人が結構多いのではないかと考えています。そこで今回、あえて取り上げて事実の周知をすることにしました。

実は既に、Twitterのモーメントにまとめて周知と問題提起をさせて頂きました。

憶測である、謂われのない誹謗中傷だと結構言われました。

また何人かには心無い罵倒も頂きました。「馬鹿」だとか「アホ」だとか「トンデモ」だとか。捨て垢を作って執拗に攻撃を仕掛けてきた人までいました。

それらについてはあえて一々晒し上げませんが、正直かなりうんざりしましたね……。いくら何でも疲れますって。そこまでして邪魔な者を攻撃しようという執念は目を見張るものがありますが。

この件、よほど真相に触れられたくない人がいるんじゃないかと思えてならないんですが……。闇を感じます。これは憶測ですね(笑)

一応、私の立場を申し上げますと、私は決してNEMの不買を呼びかけるものではありません。あくまでも事実の周知と、将来の改善を期待して書くものです。

また、これから述べることは、私なりに一次情報や二次情報に当たってきちんと調べたことです。私個人としては根拠のない憶測を述べているつもりはありません。

しかし、私がそう思っていたとしても、読んだ方がどう判断するかは自由です。ですから、以下を読んでどういった感想をお持ちになっても構いません。まったく違うと思う方や、憶測に過ぎないと思う方や、反対意見を言いたい方もいるでしょう。また事実と認めても、それの何が問題だと思う方もいるでしょう。

それは結構です。人それぞれの意見があって良いと思います。

ですが、特に執拗な方、また心無い方には申し上げたい。

私に対して意見自体をするなとは言わないで頂きたい。それに不当な人格攻撃までされる謂れはありません。

特に匿名ならどんな攻撃をしても良いと思い上がっている人間に対しては、今後は毅然とした態度で臨みます。あまりにひどいものについては、法的措置も辞さない構えです。

私はやると言ったら損をしてもやる人間なので、本気でやりますよ。空気は読みませんし、自重もしません。一度やると決めたらいくら止めようとしても無駄です。

ですから、もし私に対して執拗に攻撃をするつもりなら、常にやり返される覚悟を持ってして下さい。

匿名でも情報開示を請求すれば大体は一発でわかります。できれば無駄な争いはしたくありませんので、どうか人として節度ある言動をされるようお願いします。

 

もう一度改めて、私の立場を明確にしておきます。

私は、NEMの不買を呼びかけるためにこれを書いたわけでも、これから書くのでもありません。NEMの現状について、NEMを好きな方にも嫌いな方にも、なるべく正確に理解してもらえるように、自分なりに調べた事実に基づいて書きます。どちらにとっても参考になればと思います。

そして、NEMの理念である「富の分配」の真の賛同者こそ、かなり不平等なシステムになってしまっている現状をよくよく認識して頂きたいと思っています。

不平等も、結局は程度問題なのです。それに対して少しでもできることを、システムの改善をみんなが真剣に議論することが有意義なのではないかと思います。

NEMコミュニティが本当に良いものであれば、やがて問題点は改善されていくでしょう。私はそのことも少し期待してこれを書きます。

 

■次回の予定~NEMのホワイトペーパーを引用し、PoIの算式について解説します~

PoIの算式を順番に読み解いていき、決してPoIがPoSの本質的改良とは言えないことを示します。

詳細は次回に譲りますが、PoIがPoSとそんなに変わらないことのスケッチを描くと、大体次の通りです。

細かいことは無視してすごく大雑把に言うと、PoSは「保有量」に応じて比例的に報酬が決まり、PoIは「保有量」と「送金量」に応じて比例的に報酬が決まります。

そこで、次の記号を用意して、PoS、PoIそれぞれの報酬について論じます。

S:保有量、T:送金量、k,l,m:比例定数

1.PoSの報酬

大体保有量Sに比例するので、比例定数kを用いて

(PoSの報酬)=kS

となります。

2.PoIの報酬

大体保有量Sと送金量Tに比例します。

ここで、送金量Tも概ね保有量Sに比例するでしょう。普通は多く持っている人ほど多く送金できるし、送金によって重要度スコアを稼げることを考えれば、インセンティブのためにもある程度はするでしょう。

そこで、比例定数を用いてT=lSとおけます。(あくまで大雑把な話です)

PoIの報酬は、保有量Sと送金量Tに比例するので、それぞれ比例定数k,mを用いて、次のように表されます。

(PoIの報酬)=kS+mT

ここで、T=lSを代入して

(PoIの報酬)=kS+m・lS=(k+lm)S

となります。

まとめましょう。

(PoSの報酬)=kS

(PoIの報酬)=(k+lm)S

であり、どちらも保有量Sに比例しています。

つまり、PoIも結局は持つ者ほどより稼げる仕組みだと言うことです。

しかも、実際のNEMは送金量Tに条件があります。それは「送金元も送金先も10000XEM以上持っていて、かつ一回の送金が1000XEM以上でないと重要度スコアの加算対象とはならない」というものです。

こうした項目があるために、実際のPoIはPoSよりも大量保有者にやや有利に働きます。

関連記事

  1. SP8DE

    SP8DE(スペード) ホワイトペーパーを読み解こうと「していた」~運営の不誠実と私の投資判断の誤り…

    SP8DE(スペード) ホワイトペーパーを読み解こうと「していた」~運…

  2. 仮想通貨(暗号通貨)

    レスト版 仮想通貨格付け2018~素人が格付け会社に対抗してみた~

    レスト版 仮想通貨格付け2018~素人が格付け会社に対抗してみた~…

  3. 仮想通貨(暗号通貨)

    2017年の投資活動を振り返る その1 ~人生の未来を賭けた大勝負に挑む~

    2017年の投資活動を振り返る その1 ~人生の未来を賭けた大勝負に挑…

  4. 仮想通貨(暗号通貨)

    2017年の投資活動を振り返る その2 ~人生を変えるための集中戦略~

    2017年の投資活動を振り返る その2 ~人生を変えるための集中戦略~…

コメント

    • 畑人
    • 2018年 1月 31日

    T=lSとおけます。

    これが分からないです。私はおけないと思います。
    よって、人によっては論理が破綻しているように感じるんじゃないかな。

      • rest256
      • 2018年 1月 31日

      ここではかなり大雑把な話をしていますので許して下さい(笑)
      実際はまったく比例ほど単純な関係ではないと思いますが、何らかのSの関数では書けると思います。
      そして、実際には送金コストに上限があることと、重要度スコアによるインセンティブを考えると、
      Sに対して逓減的になっていく(少額保有者にとって有利になる)とは考えにくいです。

    • NEM終了
    • 2018年 1月 31日

    要するに「綺麗事並べてるNEMが気に入らない」ってことですよね
    「着飾ってる人が裏で真逆のことをしているのを暴きたい」って言った文春みたいなことですよね

      • rest256
      • 2018年 1月 31日

      潔癖症な部分はあるので、どうしてもそういう気持ちはありますね(笑)
      ただ別に良いじゃないかって意見があっても結構だとは思うんです。

    • カレ
    • 2018年 2月 02日

    最もお金に対してシビアに考えている団体に思えますね。
    富を集中させることで一枚岩にする、これによって分裂による弱体化をなるべく防ぐ
    そして自分達の資産を守るために価値を証明、保証する、つまり集めた富を使って世に普及させる、普及に勢力するためにはお金がいる。
    理想論を並べて裏では利己的なところは私も拒否反応を覚えますが将来最も普及する仮想通貨なのかもしれないと同時に感じました。そして恐ろしい。

    POSによって危惧されている沢山もっている人が積極的に使わないと普及しない流通しない問題ですが
    NEM財団はこの危機を最も理解し、そして人間心理的にはPOIによって最も解決に近い状況に持っていっているのではないでしょうか
    誰だって自分の財産を守るためには必死でしょうから。

      • rest256
      • 2018年 2月 05日

      やり方は正直あまり好きではないのですが、賢い人たちだなというのは本当に思いました。
      式の立て方や建前の実質の隠し方が巧妙で、とてもじゃないですがある程度きちんと調べた者
      でなければ本質は見抜けません。
      そして、見抜いている人の中にもわかっていて利用している人間が多いように思います(笑)
      上手いこと人々を惹きつけていますので、投資対象としては成功するのではないかと思われます。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. Cardano(ADA)

    Cardano(ADA)について徹底的に調べてみた 第1回~ホワイトペーパーを読…
PAGE TOP